花言葉の起源とハーブ

花言葉は誰が決めた?花言葉の起源

花言葉

バラは愛、オリーブは平和というように、花言葉(language of flower)は花のもつ特徴・性質などに基づいて象徴的な意味を持たせています。

普段何気なく使っていますが、元々は誰が何のために考えたのでしょう。

実のところ、花言葉の正式な起源はほとんど分かっていないのですが、その発祥は17世紀ごろのオスマン帝国(当時のトルコ)の首都イスタンブールだと言われています。

トルコでは、恋人への贈り物として文字や言葉ではなく「花に思いを託して恋人に贈る風習セラム(selam)」(アラビア語のsatam「あいさつ」が語源)があり、これを元にその花のイメージから花言葉ができ上がりました。

最初は花言葉が広がらなかった

花言葉の起源ただ、この説が広まったイギリスでは、ロマン主義時代特有の異国への憧れにすぎないとして、支持しない説もあります。

史実としては、1716年にイギリスのコンスタンティノープル駐在大使エドワード・モンタギューの夫人であったメアリー・ウォトレイ・モンタギュー(Lady Mary Wortley Montagu,Lady 1689~1762年)が『トルコ書簡集』(1763年)で花言葉をトルコの風習として紹介したことが、記録として見られる早い方だと思われます。

モンタギュー夫人の生家はキングストン侯爵家で、詩人・手紙文学の女流文人で美貌だったことでも知られ、トルコの習慣や衣装などを事細かに手紙で本国へ伝え、本人の希望もあってその死後に書籍として出版されました。

「この国では、どんな色にも、花、草、果物、石、鳥の羽にも、それに関連した詩があって、あなたはそれを組み合わせることによって、争うことも、避難することも、友情、愛情、儀礼の手紙を書くことも、さらにインクで指を汚すことなしに、ニュースを送ることもできる」

と手紙に書き、その見本としてバラと黄水仙を組み合わせた「花の手紙」も送ったのですが、当時は何の反響もなく、特に広まることはありませんでした

同時期、ヨーロッパからアジア、アフリカなどを旅行して周り、トルコに4年間滞在したオーブリー・ド・ラ・モトライエ(Aubry de La Mottraye 1674~1743年)も、1727年にスウェーデン王カール12世の宮廷に招かれた際に花言葉を紹介しています。

花言葉の広まるきっかけ

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス

このように、ヨーロッパへ花言葉の文化が渡ってきたものの広がらなかったのですが、本格的に広まるきっかけを作ったのはその後のフランス貴族社会の女性たちです。

19世紀初頭、草花を擬人化した詞華集(詩文の美しいものを選び集めた本、アンソロジー)が人気を博し、草花の性質にことよせて恋人の美しさを賞賛したり、あるいは不実や裏切りを非難するといった恋愛の駆け引きが流行、このようなエッセイを書き綴った手書きの詩作ノートが回覧されていました。

1818年、シャルロット・ド・ラトゥールは『花言葉』 (Le Langage des Fleurs)を出版、これが初期の花言葉辞典と言われており、パリで出版されたあとで十八版を重ねるなど人気を博しています。

スペインやアメリカでこの本の海賊版が現れるほどで、フランスでは類書がたくさん出るなどして評判が高まり、それがヨーロッパ全体に広がったあと、日本にも伝えられました。

なお、1887年に刊行されたジョン・イングラム著『The Language of Flowers : or Flora Symbolica』では「花言葉を最初にヨーロッパへ普及したのはモンタギュー夫人だ」と太鼓判を押しているほか、イギリスとフランスで普及したことについては「ラ・モトライエの力添えにも負うところが多かった」と書いてあります。

日本へは明治初期に渡来

一方、日本へ花言葉が来たのは19世紀末の明治初期になります。

1886年に出版されたルーイスダルク女史原著、上田金城氏訳述『新式泰西礼法』で紹介されました。

「諸種の花には各々意味があり、諸花の意味を知るは礼法に関係するの場合多し、これを知らざるために人に蔑視せらるることあり」

と前置きしたうえで、

「若年女史の帯ぶべき花 ローズポンポン(百葉薔薇の一種)は児童の愛敬の意なり。白薔薇花は清浄の義なり」

「花の将に開かんとする風情ある女子に象れる桃色薔薇花や、夫婦の情愛といふ意ある黄薔薇、桃花、玉賛花(水仙)等は願望の意なり、此等の花は妻君に適するのみ。極紅の諸花は皆若年女子に適せざる意味あり、其意多くは情の過激に渉るを以て、男子に属す」

など、数十種の花の持つ意味を女子に説明しています。

日本での花言葉は与謝野晶子が最初

花言葉と日本

なお、『新式泰西礼法』の花言葉に関する記述は第二十章「花の礼」のみで、1冊の本になったのは、石川啄木のあとを受け『スバル』の編集をしていた詩人の江南文三(1877~1946)が花言葉を解説し、それに花を主題にした与謝野晶子(1878~1942年)の短歌五十首を収め1910年に出版された『花』が最初です。

当初は、伝来した花言葉の意味をそのまま使っていましたが、次第に日本人の風習や歴史に合わせて日本独自の花言葉に変更されていきました。

今では、日本独自の新品種が開発された際に開発者自身が花言葉を命名したり、生産者が新しい花言葉を消費者から募集・命名する場合や、販売会社が独自に命名するなど、日々新しい花言葉が生まれています

このように、花言葉はそれぞれの国の歴史や風習、神話や伝説などから生まれているため、同じ花なのに花言葉が全く違う場合があるので注意が必要でしょう。

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