ディルは、糸のように細い葉と黄色い傘形の花が特徴のセリ科のハーブで、和名を「イノンド」といいます。さわやかな香りが魚料理と相性抜群で、北欧ではサーモンやピクルスに欠かせない存在です。このページでは、ディルとはどんなハーブか、フェンネルとの違い、伝統的な効能と料理での使い方、保存方法、育て方まで、まとめて紹介します。
| 名前・別名 | ディル(Dill)/イノンド |
|---|---|
| 学名 | Anethum graveolens |
| 分類 | セリ科イノンド属 |
| 種類 | 一年草 |
| 草丈 | 60cm〜1m |
| 原産地 | 地中海沿岸〜西アジア |
| 花期 | 5〜7月(黄色い小花が傘のように集まって咲く) |
| 呼び名 | 葉は「ディルウィード」、種(果実)は「ディルシード」 |
| 寒さの目安 | やや強い(秋まきでは霜よけをすると安心) |
ディルとは?特徴と名前の由来
ディルは、地中海沿岸から西アジアが原産のセリ科の一年草です。羽のように細かく裂けた糸状の葉を持ち、初夏になると茎の先に黄色い小さな花が傘を広げたように集まって咲きます。葉はさわやかでやわらかな香り、種はやや強いスパイシーな香りがあり、どちらも料理に使われます。
「ディル」の名は、古いスカンジナビアの言葉で「鎮める・なだめる」を意味する「dilla」に由来するといわれます。古代エジプトの時代から使われてきたハーブで、新約聖書(マタイによる福音書)にも、ミントやクミンと並んで税として納められていたことが記されています。漢方では、種を「蒔蘿子(じらし)」と呼びます。
ディルとフェンネルの違い
ディルは、同じセリ科のフェンネルとよく似ていて、葉や花だけでは見分けにくいハーブです。違いは次のとおりです。
| ディル | フェンネル | |
|---|---|---|
| 種類 | 一年草 | 多年草 |
| 草丈 | 60cm〜1m | 1〜2m |
| 葉 | より細かく、やわらかい | ディルより太めで大きい |
| 香り | さわやかで、少しツンとする | 甘い香り(アニスに似る) |
| 株元 | ふくらまない | 白く太る品種(フローレンスフェンネル)がある |
| よく合う料理 | 魚料理、ピクルス、ポテトサラダ | 魚料理、カレー、お菓子(種) |

ディルとフェンネルは近くに植えると交雑しやすく、採った種から育てると香りが混ざってしまうことがあります。両方育てるなら、離れた場所に植えましょう。
ディルの効能と使い方
伝統的な使われ方
ディルは、古くから消化を助けるハーブとして使われてきました。古代ギリシャではしゃっくりを鎮めるとされ、ヨーロッパでは種を煎じた「グライプウォーター」が、むずかる赤ちゃんをなだめる民間の飲み物として使われてきた歴史があります。北アメリカに渡った初期の移民たちは、長い説教のあいだにディルの種をかんで眠気をこらえたことから、「ミーティングシード」とも呼ばれました。
乾燥させた種は、食後のお茶としても楽しめます。小さじ1杯ほどの種を軽くつぶしてカップに入れ、熱湯を注いで5分ほど蒸らします。
料理での使い方
ディルの葉(ディルウィード)は、サーモンのマリネやスモークサーモン、白身魚のソテーなど、魚料理との相性が抜群です。ポテトサラダやヨーグルトソース、スープやオムレツに加えても、さわやかな香りが引き立ちます。香りは熱に弱いので、加熱料理では仕上げに加えるのがコツです。
種(ディルシード)は、キュウリのピクルスの香り付けに欠かせないほか、パンや焼き菓子、ドレッシングにも使います。花も、ピクルスやハーブビネガーに漬け込んで楽しめます。

保存方法
ディルを長持ちさせるコツ
- 冷蔵:湿らせたキッチンペーパーで包み、保存袋に入れて野菜室へ。数日〜1週間ほど持ちます。
- 冷凍:使いきれない葉は、刻んで小分けにして冷凍。乾燥よりも香りが残りやすく、凍ったまま料理に使えます。
- 種:花が茶色くなったら刈り取り、風通しのよい日陰で吊るして乾燥させ、湿気を避けて密閉容器で保存します。
使うときの注意
- セリ科の植物にアレルギーがある人は使わないでください。
- 妊娠中の人は、種を薬用量で使うのは避けてください(料理に使う量なら問題ないとされています)。
ディルの育て方
ディルは植え替えを嫌うので、種を育てる場所に直接まくのが基本です。春まきと秋まきができ、秋にまくと冬を越して春まで長く葉を収穫できます。
| 月 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 種まき | 3月 | 4月 | 5月 | 9月 | 10月 | |||||||
| 花期 | 5月 | 6月 | 7月 | |||||||||
| 収穫(葉) | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 10月 | 11月 | 12月 | ||||
| 収穫(花) | 5月 | 6月 | 7月 | |||||||||
| 収穫(種) | 7月 | 8月 |
※秋まきは霜よけをすると冬越ししやすくなります。

置き場所と土
日当たりと水はけのよい場所を好みます。土は市販の野菜用・ハーブ用の培養土で十分です。草丈が1m近くになるので、プランターなら深さのあるものを選びましょう。
種まき(直まき)
種まきは春(3〜5月)か秋(9〜10月)。根がまっすぐ伸びる「直根性」で植え替えを嫌うため、育てる場所に直接種をまきます。ポットで育てる場合は、根を崩さないように本葉2〜3枚のうちに植え付けます。種の上にかける土は、ごく薄くします。
春まきは育つのが早い反面、初夏には花が咲いて葉がかたくなるため、収穫期間は短めです。秋まきなら、冬を越して春に花が咲くまで、長く葉を楽しめます。
間引きと支柱
芽が出たら、生育に合わせて間引きし、最終的に株の間を20〜30cmあけます。草丈が高くなると風で倒れやすいので、支柱を立てて支えましょう。
水やりと肥料
土の表面が乾いたらたっぷり水を与えます。乾燥しすぎると早く花が咲いてしまう(とう立ちする)ので、水切れに注意します。肥料は、植え付け時に元肥を入れ、葉を収穫しながら育てる場合は月に1回ほど追肥します。
収穫と花芽摘み
草丈が20〜30cmになったら、外側の葉から必要な分だけ摘み取ります。花が咲くと葉がかたくなるので、葉を長く楽しみたい場合は、花芽を早めに摘み取りましょう。種を採りたい株は花を咲かせ、花が茶色くなったら刈り取ります。
キアゲハの幼虫に注意
- セリ科のディルには、緑と黒のしま模様に、オレンジの斑点があるキアゲハの幼虫がよくつきます。
- 葉があっという間に食べられてしまうので、見つけたら取り除くか、防虫ネットをかけて防ぎましょう。
- アブラムシがつくこともあるので、葉の裏をこまめに確認します。
ディルのよくある質問
- ディルとフェンネルを一緒に植えてもいいですか?
- 育てることはできますが、交雑しやすいため、採った種から育てると香りが混ざることがあります。種を採るなら、離れた場所に植えましょう。
- 春まきと秋まき、どちらがおすすめですか?
- 葉を長く収穫したいなら秋まきがおすすめです。冬を越して春まで楽しめます。春まきは早く育ちますが、初夏には花が咲いて葉がかたくなります。
- ディルの葉が黄色くなってきました。
- 水切れや肥料不足、根詰まりが考えられます。花が咲き始めた株は、一年草のため自然に枯れていく時期でもあります。種を採って、次の季節にまきましょう。
- ディルの種はスパイスとして使えますか?
- 使えます。乾燥させた種は「ディルシード」と呼ばれ、ピクルスやパン、ドレッシングの香り付けに使われます。
このハーブの栽培・活用ガイド
育てている株の様子や季節に合わせて、確認することを案内します。
































