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『博物誌』とシルフィウム

『プリニウス博物誌 植物編』

プリニウスの『博物誌』は、テオフラストスの『植物誌』より300年ほど後の書物です。

この『博物誌』は、プリニウスが見聞・検証した事柄以外に他書物をまとめた部分もあるため、『植物誌』と同様の内容も見られます。

ただ、『博物誌』独自の記述もあるため、記述箇所をすべて取り出してみます。

大槻 真一郎 (編集)『プリニウス博物誌 植物編』 八坂書房
(p257、461、492~495、528、533)

Ⅴ 森林(野生)樹

六一 雨のはたらき
143 また以上の樹木に関しては、たんに土地の性質とか気候の永続的な作用ばかりでなく、さらに天気のある一時的な作用も重要である。すなわち、降雨は何らかの仕方でしばしば種子を運んでくる。そして種類の明らかな植物や、さらに時には未知の植物からも種子が雨に流されてやってくる。キュレナイカ地方に初めてラセルピキウムが生えた時には、実際そういうことがこの地に起こったのである。これは草本類の性質を扱うところで述べよう。このキュレネの町の近くにある森も、ピッチのような色の激しい雨によって生じたものである。


Ⅶ 穀物とマメ類
308 ヒヨコマメだけは納屋に入れておいても虫がわかない。酢の入った壺を灰床において敗を塗り、その壺の上にマメを積み上げておくと、害虫がわかないと信じている人がいる。また、塩漬け用の瓶に入れて、その瓶に石膏を塗る人もいる。またある人は、ラセルピキウムを混ぜた酢に浸して、それを乾かしてから、またオリーブ油をふりかける。


Ⅷ 繊維作物と野菜

十五 ラセルピキウム
これらのすぐ次には、重要な植物としてよく知られているラセルピキウムを語るのがよいであろう。それはキュレナイカ属州で発見され、ギリシア人たちはこれをシルフィオンと呼んでいる。この汁はラセルと呼ばれ、薬用としてとても有益で、同じ重さのデナリウス銀貨で取引された。

39 だがその地で最近しばらくラセルピキウムは見つかっていない。かつて底を牧場として貸借した収税役人たちが、もっと儲けがあると考え絵、家畜の飼料にして荒らしてしまったからである。われわれが記憶している限りでは、茎が一本だけ発見されてネロ工程のもとに送られた。もし家畜が生えだしそうなラセルピキウムを見つけた時、それは次の様子で分かるであろう。すなわち、ヒツジはそれを食べるとすぐに眠ってしまうし、ヤギはくしゃみをすることによって。

40 すでに長い間ラセルは、ペルシア、メディア、アルメニア以外からは輸入されていない。それらは収穫量が多い反面、質の面ではキュレナイカ産よりも劣る。さらに、ゴムやサコペニウム(オオウイキョウ属の植物からとった芳香ゴム)やソラマメを潰したものを混ぜてごまかしたラセルさえあるのだから、次のことは書き記しておくべきだと思われる。すなわち、ガイウス・ウァレリウスとマルクス・ヘレンニウスが執政官だったとき(前九三年)三〇ポンド(約九・八キログラム)のラセルピキウムがキュレネ(キュレナイカ属州の中心都市)からローマへ公費で輸入されたという事実、またちょうど独裁執政官であったカエサルが、市民戦争の始まった頃(前四九年)、金・銀とともに一五〇〇ポンド(四九一・二キログラム)のラセルピキウムを国庫から持ち出した事件のことである。

41 最も信頼のおけるギリシアの著述家たちが書いているところによると(テオフラストス『植物誌』三・一・六、六・三・三)、ラセルピキウムは、ヘスペリデスの庭園や大シルテス(アフリカ北海岸の流砂地域)がある付近で、キュレネ市建設の七年以上前に、突然ピッチのような黒い雨が降り注いだ土地で生じたことがわかる。なおキュレネ市は、ローマ建都一四三(前六一一)年に建設された。その雨の影響はアフリカの四〇〇〇スタディウム(約七四〇キロ)の地域に及んだ。

42 そこには今でも常に頑固な野生のラセルピキウムが生えており、栽培しようとしても、逃げるように未開の土地へ後退してしまう。太い根が数多くあり、ウイキョウのような茎で、太さも同じくらいの茎をもっていた。葉はアピウム(パセリ、セロリの類)によく似ており、マスペトゥムと呼ばれていた。種子は葉のような形で、葉そのものは春には落ちるのが普通であった。

43 家畜はいつもそれを餌にしていて、始めは下痢を起こしていたが、間もなく驚くほどおいしい肉を付けて太るようになった。葉が落ちた後は、人々も茎そのものを煮たり焼いたりして、あらゆる方法で調理して食べていたが、人間の体の場合も、最初の四〇日間は下痢を起こした。液汁は二とおりの方法、すなわち根と茎から採集されていた。この二つの液汁の名はそれぞれリジアス(「根の汁」の意)、カウリアス(「茎の汁」の意)といい、後者は前者より価値が低く、腐敗しやすかった。根には黒い皮がある。

44 商品にするための調合法は、液汁そのものを容器に入れて糠を混ぜ、ときどきかきまわして熟成させるというものであった。そのようにしないと腐敗してしまうのである。熟成の目安は、色と乾きぐあいで、表面に汗をかかなくなる。

45 また他の人々が伝えるところでは、ラセルピキウムの根は一クピトゥム(約四四センチ)以上もあり、地上の部分には確かにこぶがあったそうだ。このこぶに傷をつけると、ミルクのような液汁が流れ出るのが普通で、こぶのところから茎が生じ、マギュダリスと呼ばれた。黄金色の葉が種子の代わりで、大犬座が昇って南風(七月中旬)が吹く頃に落ちる。この葉からラセルピキウムが生え、一年もすると根も茎も完全に生長する。また次のことも報告されている。ラセルピキウムのまわりを掘る習慣があったこと、家畜は下痢を起こさないが、病気にかかった家畜が食べた場合は、治るかすぐに死ぬかのどちらかであったことである。ただし、このようなことはめったに起こらなかったという。先に紹介した見解は、ペルシアのシルフィオンに該当した。


一六 マギュダリス

46 ラセルピキウムのもうひとつの種類はマギュダリスと呼ばれ、柔らかく苦みがなく、液汁もない。シリアの周辺に生育し、キュレネの地域には見当たらない。パルナソス山(ギリシアのフォキス地方にある山。デルフォイ神殿はその中腹にある)にもたくさん生えていて、これをラセルピキウムと呼ぶ人々もいる。これらすべてのせいで、最も健康によく有益な品種の信用が危うくなっている。純粋なラセルピキウムの証拠はまず第一に、色が程よい赤色であることで、砕くと内部は白い。次は、雫が透明になり、唾液ですぐに溶けることで、多くの薬剤に用いられている。

153 ところで、カルドゥウスは二とおりの方法で栽培されている。秋に苗を植える方法と、三月七日以前に種子を撒き、そこから出た苗を十一月一三日前に、または寒い地方では西風(春風)の吹く頃に植える方法である。もしできれば、さらに肥料を与えると豊作になる。また、いつでもカルドゥウスを欠かさないようにするために、ラセルの根とクミンを加え、ハチ蜜を溶かした酢に漬けて貯蔵する。

167 ギト(クロタネソウ属)はパン屋が用いるために、アニス(セリ科)とディル(イノンド属)は家庭の台所で用いるため、また医薬用として育てられる。ラセルに混ぜるサコペニウムもそれ自体は菜園でとれるものに違いないが、医薬用にしか用いられない。


『プリニウス博物誌 植物薬剤編』

プリニウス博物誌 植物薬剤編上述の『プリニウス博物誌 植物編』は「Gaius Plinius Secundus:Naturalis Historia」の全37巻中第12巻から19巻までのラテン語原典を全訳したものなのですが、それに続く20巻から27巻までの原点を全訳したものが『プリニウス博物誌 植物薬剤編』になります。

この中にもシルフィウムがところどころ出てきており、単体で利用するのではなく配合剤として調合し利用されていた様子が記述されています。


大槻 真一郎 (編集)『プリニウス博物誌 植物薬剤編』 八坂書房
(p12、17、23、25、26、38、166~168、204)

Ⅰ 野菜の薬効

一七 野生シセル
34 野生シセルは栽培種と似ており、効能も似ている。ラセルピキウム入りの酢につけて食べるか、または胡椒とハチ蜜、あるいはガルム(魚醤)につけて食べると、胃を刺激し、食欲不振を解消する。

56 ニンニクを食べ物や飲み物と一緒にとると癲癇を治し、その球根一個を一オボルス(約〇.六グラム)のラセルピキウムとともに辛口ブドウ酒に入れて飲むと、四日熱をはらうと信じられている。

80 カトーは「縮葉キャベツ」を一番重んじた。その次には葉が大きくて茎が太い、滑らかな品種を重んじた。彼は、それを生のまま酢蜜、コエンドロ(コリアンダー)、ヘンルーダ、ハッカ、ラセルの根に混ぜ、二アケタブルム(約一三六ミリリットル)を毎朝服用すると、頭痛、目のかすみ、目のちらつき、脾臓、胃、そして心窩部に有効であるとし、効力が非常に大きいので、それらを磨り潰す人自身が丈夫になるように感じるほどであると述べている。

90 干したキャベツの茎の灰は腐食剤のひとつとされている。そして古い脂肪と混ぜて坐骨神経痛に用いられ、ラセルおよび酢と混ぜたものは脱毛剤として塗布され、抜けた毛の後に他の毛が生えるのを防ぐ。

94 またキャベツの煮汁三に対してみょうばん二を加えたものを強い酢に溶いて塗布すると、プソラ(皮膚病の一種)や慢性のレプラが消える。エピカルモスは、狂犬の咬み傷にはそれを塗っただけで十分だが、ラセルの汁および強い酢を加えたものはさらによいとした。またそれを肉に加えて与えると、イヌは死ぬと言った。その種子を炒ったものはヘビ、キノコ、牡ウシの血の解毒剤になる。

141 ハチ蜜やみょうばんを加えて塗るとプソラ(皮膚病の一種)やレプラがよくなり、同様にトリュクノスやブタやウシの脂肪を加えて塗ると、乾癬、疣、腺腫やそれらに似た症状を改善する。酢や油あるいは白鉛に入れて塗ると丹毒を、酢に入れて塗ると癰をよくする。ある人々はラセルピキウムを一緒に塗るとよいというが、それがなくともエピニュクティス(膿疱)に用いる。


Ⅲ 草本類の薬効

四九 ラセル
101 ラセル(ラテン語のラク「乳、乳液」)とシルフィキウム「シルフィウムの」が縮まった語)は既述のようにシルフィウムから生じ、自然の特別な賜物のひとつで、多くの配合剤として調合される。それ自体としては、冷えた体を温め、飲むと筋肉の疾患を和らげる。ブドウ酒に入れて夫人に与える。また月経を促進するには柔らかい羊毛に浸して子宮に挿入する。足のうおのめはナイフでまわりに傷をつけ、蜜蝋をまぜたものを塗ると抜け落ちる。ヒヨコマメほどの大きさのものを水に溶かして飲むと利尿効果がある。

106 専門家が、痛む虫歯にラセルを詰め蜜蝋でふさぐとよいといっていることは認めがたい。こうしたために高所から身を投げた人が出るという悲劇が生じたからである。実際、鼻孔に塗ってやると雄ウシを怒らせ、ヘビの好むブドウ酒にこれを混ぜてやると、裂けてしまうのである。アッティカのハチ蜜を混ぜるとよいと指摘する人もいるが、そのようなものを塗ることを私は勧めない。ラセルと他の物を混ぜたものにどれほどの効用があるかを述べたらきりがくなる。われわれが扱っているのは、合成しないままの個々のものである。

107 ハチ蜜の価値は、もしそれがどこにでも生じるものでなかったなら、ラセルに劣らず貴重であろう。自然はラセルを手ずからつくり、ハチ蜜を生み出すためには、既述したように昆虫をつくり、無数の用途に備えた。どれほどいろいろなものとハチ蜜を混ぜ合わせるかを考えると、このことが分かるだろう。


Ⅳ 栽培樹の薬効

57 毒を吸い上げたあとに口を酢ですすぐ点についても、事情は同じである。酢の力はあらゆるものを手中におさめており、単に食糧だけではなく、きわめて多くのものに関わっている。酢をそそぐと、それまで火でも崩すことができなかった岩を崩す。ほかのどんな液を使おうとも、食べ物にこれほど魅力を添え、風味をこれほど引き立たせることはできない。酢をこういう目的で使う場合、焼いたパンやクミンによってその効果は和らげられるが、コショウやラセルによって引き立てられる。またとくに塩によってその効果は抑えられる。


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