イギリスの植物学の父として有名なウィリアム・ターナーは、16世紀の薬草専門家です。ターナーは薬用植物を熱性・冷性・乾性・湿性の度合いによって分類しました。
熱・乾性は陽の力、冷・湿性は陰の力にそれぞれ対応するものです。熱性の度合いには四度あって、例えば熱性一度という薬用植物は熱性二度の植物ほど暖める作用が強くないという考え方です。
冷性にも四度の段階があります。もっとも、こうしたものは陰陽とぴったり厳密には対応していないので、同じ一つの薬用植物が熱・湿性、あるいは反対の冷・乾性に分類されることもありました。
17世紀、魔女狩りや宗教弾圧などの影響から、伝統医薬ハーブの知識は抑圧されて、ローマから遠く離れたイギリスの薬草学者の黄金時代となりました。
ジョン・ジェラード、ニコラス・カルペッパーおよびジョン・パーキンソンはすべてこの時代の人々です。薬草についての人々の知識は非常に深まり、しかもこの知識はまだ化学に見劣りしませんでした。
薬草医学が広く行われたために、ニセ医者やペテン師たちはすばやくこの風潮に便乗しました。ユージン・リンメルは書いています。
「金モールつきの豪華な赤いコートで身を飾った旅回りの薬草売り、または『ニセ医者』は、優雅な馬車の上から口をあんぐり開けて見つめる群集に声をかけ、楽器の伴奏とともにその香水といかさま薬を売る。
……この連中はふつう、粉薬・チンキ・丸薬・オーエコロンおよび点滴下剤を扱っていた。」
この時代には、薬草医学が、特に医療関係者たちの間でその信頼を失い始めます。これは前記のようなニセ医者たちが現れたことが大きな原因でした。
1722年に書かれたジョセフ・ミラーの著書『薬草誌』は、数十種類のエッセンスについて触れており、そのうちの13種類は薬局方にあるとしています。
この本で取り上げているエッセンスはカモミール・シナモン・ウイキョウ・ジュニパー・ローレル・ペニロイヤル・ローズマリー・タイムなどです。
このうち薬局方に納められているものは、ジュニパーとタイムの2つだけです。また、カモミール・ディル・没薬・バラの四種類の滲出油およびナツメグの圧搾油一種類も薬局方に含まれていました。